物理的領域の因果的閉包性

アウトライターズ・スタジオ・インタビュー 第41回 「なもやなしさん」


アニメの感想をブログやツイッターで表現されている方々に質問して答えてもらう
『アウトライターズ・スタジオ・インタビュー』
第41回はツイッターで活動されているなもやなしさん @yonakan0sugaku です。


アニメを好きになったきっかけを教えてください。

子供時代は宮﨑駿・ドラえもん映画・ディズニーが家族でも定番で、家に一通りあったダビングVHSを繰り返し観ていました(いつからか親が好きだった『ハイジ』と『未来少年コナン』のDVDも追加)。探偵の方のコナンも好きだったものの、TVアニメはふわっと眺める程度だったと思います。
そこから高校時代に後追いで『涼宮ハルヒ』に遭遇、その新しさに驚き…なんてのも懐かしいです。今ほど若者層向けアニメが広く取り沙汰されていない頃、地方住みで周囲にアニメファンも少なく、当時は深夜アニメの存在さえ知りませんでした。
ただ今のように「アニメ」に関心を持ったのはずっと後で、2011年に話題をかっさらった『まどマギ』さえスルーしていたような塩梅でした。

'12年になって観た『みなみけ』は、アニメの作画や演出に興味を持つ最初のきっかけでした。面白いと感じるのに何が面白いのかさっぱり分からず、感想ブログを片っ端から読んだ挙句「演出」に触れる記事に出会ったのが始まりです。
ただ、はるかに大事件だったのは、丁度その頃になぜかアニメファンの友人に勧められて観た『少女革命ウテナ』です(年が分かるのは前年の『ピンドラ』を後で知ったため)。その奇抜すぎる表現・寓話のような世界観は、私が知っていた「アニメ」のあり方とはあまりにも異質でした。なのにぐいぐい引きつけられ、物語が終わってみれば正体不明の強烈な情動が湧き上がり、その後は自分の人生まで変わったかも…アニメに強く感動したことはあれど、ここまで揺さぶられたのは初めてでした。友人よありがとう…。

以来アニメそのものに取り憑かれて、新旧ジャンルも問わず、スタッフや技術の事も調べながら貪るように視聴し始め…今に至ります。


好きなアニメ作品を教えてください。

自分の現在までのアニメ体験を地図に描いた時、図上で目印になりそうもの…というイメージで、出会った順(多分)に選んでみました。

ドラえもん のび太の魔界大冒険・のび太と鉄人兵団
アルプスの少女ハイジ、未来少年コナン・宮﨑駿監督映画全て
ルパン三世 ルパンVS複製人間
MASTERキートン
涼宮ハルヒシリーズ
銀魂
カウボーイビバップ
みなみけ
少女革命ウテナ・輪るピングドラム
千年女優
攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX
ねらわれた学園
ARIA
ゆゆ式
キルミーベイベー
桜蘭高校ホスト部
蟲師
マイマイ新子と千年の魔法
ピンポン THE ANIMATION
シムーン
SHIROBAKO
放課後のプレアデス

最後のプレアデス、こうして見ると最初に挙げたドラ映画っぽいかも…。


好きな作品の中から1つ選んで、好きな理由を教えてください。

ルパンVS複製人間とカリオストロの城は、同じ『ルパン三世』なのにキャラクターも物語も表現も極端に異なる映画だと思います。でもどちらも大好きです。ルパンといえばカリ城しか知らなかった頃に初めて観た複製人間は、「アニメに出来ること」の振れ幅の大きさを人生で最初に教えてくれた気がします。
アニメの『ルパン三世』というタイトル自体、どんな表現も受け入れる器であることが一番の魅力だと思います(そういえば、初めて観た出崎統アニメもルパンTVスペシャルの『ヘミングウェイ・ペーパーの謎』だったはず)。


主に作品のどういう部分に注目しますか?

まず映像の雰囲気、さらに表現と物語の関係です。
「雰囲気」は絵や音の表現、キャラクターたちとその置かれた状況・行動様式・関係性などの全体からくる、物語の語り口…広い意味での世界観だと思うので、その分どんな作品でもまずは雰囲気を自分のものにしたいです。あと音楽・楽器が趣味だったせいか、音楽(劇伴)には結構注目してしまいます。一旦劇伴(の付け方)が気に入ると、見る時のテンションもがらっと変わります。


あなたにとってアニメとは?

前項からの連想ですが、音楽かなぁと思いました。色んな情念を持って動くキャラクターたちのアンサンブルに自分がどう「ノル」か、どの「パート」に「聴き込む」か…と言うとかなり音楽っぽくないでしょうか。考えたら視覚的な部分も、作画の(楽譜のような)タイムシートやカットワークによる時間の操作ですし、台詞の間、静と動、感情の動き、カメラの寄り引き、光や色の変化、シーンの構成も、もちろん音や劇伴の付け方もリズムを作るはずです(「そう、何をするにしても大切なのはリズムだ」)。生活に絶対必要ではないけれどあると生活が潤う、という意味でも音楽は近いです。
…ってなんだか実写も同じっぽいですが、アニメの場合線や色や声や音という単位で、非常に多くのスタッフが一から作り上げるアンサンブルが大きな魅力だと思います。それらが精緻にコントロールされる一方、例えば「絵」を扱うことから来るブレも多く含んで出来上がるわけで、考えたらめちゃくちゃ面白い媒体ですね…!


感想(考察)を書こうと思ったきっかけを教えてください。

ツイッターも最初はアニメ情報収集用(特にスタッフの呟き狙い)でした。それが感想を呟くファンアカウントまでフォローしてみた所、釣られて自分もツイートするように。
そういえば、実は昔仲間内で始めたブログが今もあって、アニメやら映画やらの感想はずっと前から書いていました。が、そちらはほぼ非公開+読者も現状ほぼ1人で、私生活のアレヤコレヤも多々あって今更公開できないし、感想用ブログを開設したいなと以前から考えてはいるんですが…
まあ今思えば、何にしても「書く」行為自体が元々自分にとって生活の中の当たり前だったみたいです。


感想(考察)を通して何を伝えようとしてますか?またどう伝えようとしてますか?

例えば、自分が観ていておおっ!と思った瞬間の「おおっ!」の感覚を、もっとハッキリ掴まえる過程に感想がある…と思っています。「おおっ!」は自分の声だから、半分は自己表現です。だからそれが他の人に通じたり、逆に自分が新しい「おおっ!」を得られるアニメやその感想に出会うと凄く嬉しいです。
同時にそれを呼び起こしたのは「画面上で起こったこと」なので、あくまで自分が観た映像のどの要素をどう読むか、になるべく注意します。「どう読むか」はそのまま「どう語るか」に直結するし、その間隙で初めて「おおっ!」を得ることも多々あって、鑑賞中と書く(読む)段階とで2度おいしい。
「おおっ!」とまで行かない些細で微妙な感覚も同様だし、違和感や嫌悪感含みの「おおっ?」のことも。残念ながら一見して反応を持てない作品もありますが、今の自分に(まだ)必要ないだけなんだろうなと思います。

…と言ったもののあまり実践出来てなくて、感想も気分次第で超適当になりがちですが…。
以前は何か他人に伝えて云々などは考えてもみませんでした。とはいえSNSですし、それなりに人に見られるようにもなったしで、なるべく人にも作品にも自分にも誠実に、なるべく面白いことを言おう、とは心がけています。


あなたにとって感想(考察)とは?

日記です。アニメでも生活体験でも、ある日のある瞬間を言葉のかたちにしておくことは楽しみのひとつになっています。他人のを見たり見られたりもあるので、「交換日記」かも。そういえば『ARIA』原作版にて、主人公の水無灯里さんが毎回宛先不明のメールを書いている(アニメでは友達のアイちゃん宛)のですが、感覚的にはあれだと思います。


ブログを書く場合、構想?日、実際に書く?時間、書いている時間に遊んでしまうことはよくある?

ブログの場合は構想以前に見切り発車で書き始めてしまいます。途中で構想が大幅に変わったり、あれもこれもと詰め込んでしまったり、本編を細かく何度も見返すわスタッフ関係で調べ物するわで、構想時間は特にない代わりに書くのに数日かかりますね…。
ツイッターの方は、瞬発的に短文でまとめなくてはいけないメディアなので、視聴後の一言感想はだらだら書けるブログより数倍頭を使っている気もします。



・ インタビューにご協力頂きありがとうございました

関連記事